レストーンの中でもギラギラとファイアが輝くことで有名なスフェーン。
スフェーンという石を聞いたことはありますか?日本語ではチタン石やくさび石とも呼ぶ石で、鮮やかな色が特徴的な天然石です。
このスフェーンが、2021年12月から、日本での7月の誕生石として追加されました。これまで7月の誕生石といえばルビーでしたが、そこへ少しタイプの違うスフェーンが仲間入りした形です。
スフェーンの特徴や歴史などに触れながら、その魅力を感じていくことにしましょう!
- スフェーンの特徴がわかる
- スフェーンが誕生石に新たに加わった経緯がわかる
- スフェーンの取り扱い方法がわかる
目次
7月の新しい誕生石「スフェーン」とは
【スフェーンの基本情報】
宝石名 | スフェーン |
和名 | チタン石、くさび石 |
英名 | Sphene |
比重 | 3.52 – 3.54 |
硬度 | 5 – 5.5 |
主な産地 | ロシア、ブラジル、マダガスカル他 |
誕生石 | 7月 |
水 | やや強い |
日光 | 弱い |
英名Spheneは、もともとギリシア語で「くさび」を意味するSphenosから来ています。スフェーンは一定の方向に割れやすい「へき開」の特徴があり、2方向に割れるその形状がくさびに似ていることからSpheneと呼ばれ、日本語でも「くさび石」という名前がついています。
スフェーンは、「チタン石」の名前の通りチタンをベースに持つ天然石です。見た目が美しいため、宝飾品として用いられていますが、その一方で、チタン酸化物を取り出す目的で工業用途にも利用されています。工業用で使用する場合は「チタナイト」と呼ぶことも多いようです。
なお、スフェーンの美しい色味は、チタンによるものではなく、混入するクロムの影響とされています。スフェーンの地の色は黄色からグリーンの鮮やかな色合いですが、光を反射すると青色や赤色に輝きます。これを「ファイア」(もしくは「ディスパーション」)と呼び、ダイヤモンドも同じ特徴を持っています。
特に、山脈などの高山地帯で産出されるスフェーンは、この「ファイア」の特徴が顕著です。このような色の変化が特に楽しめるスフェーンを、「カラーチェンジスフェーン」と呼び、国際的に認知されています。
スフェーンの価値・希少性
スフェーン自体が、あまり産出量が多くない天然石であることから、他の天然石よりも高値で取引されることが多くあります。その中でも、クラックが少ないものは特に価値が高いとされるほか、透明度の高いものも希少価値があります。
また、スフェーンの価値を決める要素としては、色味も重要です。スフェーンは、大きく分けると緑色系統と黄色系統で分けることができますが、その中でも緑色が強いものはグレードが高いとされています。
更に、先ほど紹介した「ファイア」も、スフェーンの価値を高める要素の一つです。スフェーンのファイアはダイヤモンドをもしのぐと言われていて、その緑がかった透明な表面が様々な色に力強く輝くものは、もともと高価なスフェーンの価格を更に高めます。
一方で、スフェーンの価値を下げてしまう要素としては、インクルージョンの量となります。スフェーンの色味がクロムの混入によるものであることからも分かるように、スフェーンは一般的な天然石よりもインクルージョンが多い傾向があります。インクルージョンが少ないほど、スフェーンの価値は高まっていく傾向にありますので、そのバランスが重要になりそうですね!
スフェーンの海外での人気
日本では近年ようやく知られるようになってきたスフェーンですが、海外では以前から認知されてきた天然石です。ただ、誰もが身に着けるような人々に浸透した石という位置づけにはなっていません。その大きな理由が、スフェーンが他の天然石と比べて高級感があり、そして実際に高価に取引されている石である、というのが挙げられるでしょう。
海外では、天然石を分類するときに、「貴石」(Precious Stone)と「半貴石」(Semi-Precious Stone)と、それ以外という3種類に分けることがあります。名前の通り、この順に貴重な天然石とされていて、特に貴石は非常に限られた天然石のみが分類されます。
「四大貴石」という場合は、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドを指すことは比較的知られていますね。さらに、アレキサンドライト、パール、キャッツアイを加えて「七大貴石」と呼ぶことがあります。
これらに次ぐ貴重さを持つとされているのが、「半貴石」で、ここにスフェーンが含まれています。他には、ターコイズやトパーズなどが半貴石として数えられています。半貴石の範囲は様々ではありますが、海外で一定以上の価値を認められているものとして考えて間違いはないでしょう。
スフェーンは、海外ではそのように高価値な天然石として認知されており、ダイヤモンドを超えるほどのファイアを持つスフェーンは、海外の愛好家には非常に人気が高くなっています。
スフェーンの石言葉とヒーリング効果
スフェーンは、近年まであまり注目されてこなかった天然石であることから、石言葉やヒーリング効果に関する情報も少ないのが現実です。その中でも、国内外からの情報を基に、スフェーンの持つ力や意味をご紹介していきます♪
スフェーンの石言葉は、日本では「純粋」と「永久不変」の二つが挙げられることが多いです。また、近年では、「成功」や「富」という意味も加わることもあります。
スフェーンの持つ透明感と、少しもろい性質から、純粋無垢な印象は確かに感じられます。また、光を反射して様々な色に輝くことから、様々な可能性を秘めているというイメージも持っています。これらが、スフェーンの石言葉に繋がっていると考えられます。
スフェーンは強いファイアを持っていることから、身に着ける際には、イヤリングやネックレスなどの顔周り・首回りの装飾に多く用いられています。そのことにより、周りの人から見たときに、スフェーンの輝きと顔の印象がマッチして、きっと純粋さやポジティブさを感じさせてくれるはずです。
また、スフェーンのヒーリング効果としては、疲れた心身をリラックスさせてくれる力があると信じられています。それは、スフェーンの緑色や黄色の持つ効果でもあり、心を落ち着かせることができます。このような天然石をいつも身に着けておくことで、常に平常心を保つことができ、感情を安定させて健やかな日々を送るのに役立つかもしれません。
スフェーンが7月の誕生石に加わった理由
2022年、なんと63年ぶりに日本の誕生石に新たな仲間が加わりました。これまで7月の誕生石だったルビーに加えて誕生石になったスフェーンのほか、3月にはブラッドストーンとアイオライトの2つが加わり、9月にクンツァイトが仲間入りするなど、合計で10石が追加されています。
その中で、なぜ7月にスフェーンが追加石として選ばれたのか、その経緯をご説明していきましょう。
2008年のリーマンショック、2020年からの新型コロナウイルス感染症などの影響が続いている中で、高級品である宝飾品の市場は縮小傾向にあります。その中で、もう一度宝飾品市場を盛り上げる起爆剤として、業界団体である全国宝石卸商協同組合が考案したのが、誕生石の追加という方法でした。構想からおよそ2年をかけてようやく選ばれた10石が、ついに今年確定したというわけです。
その中で、7月の新たな誕生石としてスフェーンが選ばれたのには、歴史が関係しています。スフェーンが初めて発見されたのは、1787年のこと。スイスの科学ジャーナリストだったマルク・オーギュスト・ピクテットという人が、新たな鉱物として見つけました。この、スフェーンの発見者であるピクテット氏の誕生月が7月だったことが、この月の誕生石に選ばれた理由の一つです。
また、緑色が眩しく光るスフェーンの輝きが、日本の森林の夏の様子にも重なり合うことも、理由の一つとして挙げられています。
また、今回の誕生石の改訂にあたっては、「これまであまりよく知られていなかった天然石にスポットライトを当て、天然石・宝石業界が幅広く盛り上がり、多くの人が天然石に親しめるようになるように」という思いも含まれています。みなさんも、自分の誕生石に新たな石が追加されていないか、確認してみると楽しいかもしれませんね。
なお、誕生石は国によって異なっており、あくまでスフェーンが誕生石に加わったのは日本での話であることには注意が必要です。
スフェーンの取り扱い方法
ここまで紹介してきたスフェーンですが、比較的硬度が低く、柔らかい石であることに注意が必要です。お手入れ時にも、不用意にこすったりすると表面にキズなどがついてしまう可能性があります。柔らかい布で優しく汚れを拭き取るようにしましょう。外すたびに拭くようにしておくと、強い力でこする必要もなくなるので、おすすめです。
状況によっては、水で洗い流すことは可能ですが、水がしみこむ可能性もあるため、すぐに乾いた布で水分を吸い取ることが重要です。また、超音波洗浄をするとかけてしまう可能性があるため、行わない方がよいでしょう。
更に、「くさび石」の名前の通り、一定の方向に「へき開」する特徴があることから、衝撃の方向によっては、ざっくりと割れてしまう可能性もあります。
また、直射日光にはやや弱いため、着用中の一瞬のファイアを楽しむ以外には、極力日光には当てない方がよいでしょう。保管する際には、暗い場所に置くのが適当です。
このように、お手入れは他の天然石よりも注意が必要なことが多くありますが、ダイヤモンドさえも超えると言われる美しいファイアを持つ透明感のあるスフェーンには、それだけの価値があります。
スフェーンの種類・仲間
ひとくちに「スフェーン」と言っても、細かく分類するといくつかの種類があります。特に、ゴールドスフェーン、グリーンスフェーン、カラーチェンジスフェーン、クロムスフェーンの4種類はよく知られています。
ゴールドスフェーン
ゴールドスフェーンは、スフェーン特有の黄色が強く、透明感があるスフェーンを指しています。スフェーンの中でも最も美しいと評価されることもあり、高値で取引されることも多くあります。ファイアも非常にきれいに反射し、「これぞスフェーン」という見た目と言えるでしょう。
グリーンスフェーン
グリーンスフェーンも、スフェーンの持つ色がベースになっています。スフェーンの色は、石に含まれる成分の比率によって異なっていきますが、グリーンはバナジウムが多く含まれる場合に発色すると言われています。日本ではグリーンスフェーンの人気が高いようです。また、グリーンスフェーンが赤く反射するファイアを持つ場合は、非常に高価値のものとされています。
カラーチェンジスフェーン
カラーチェンジスフェーンは、既にご紹介したように、当たる光の種類によって、石の色やファイアの色が異なって見える石です。非常に神秘的なスフェーンですので、こちらも高価なものと認識されています。
クロムスフェーン
そして最後に紹介する「クロムスフェーン」ですが、こちらも非常に価値が高いスフェーンとされています。スフェーンに含まれているクロムの成分が特に多いものを指しますが、バナジウムを含むグリーンスフェーンよりも濃いグリーンを発色します。また、その色味から、クロムスフェーンはグリーンスフェーンの一種として数えられることがあります。
同じグリーンであるクロムスフェーンとバナジウムスフェーンですが、バナジウムスフェーンに高い透明感があるのに対して、クロムスフェーンは濃いグリーンが特徴的です。グリーンが深い分、ファイアは控えめな傾向があります。一般的には透明でファイアが強いスフェーンの価値が高いとされていますが、クロムスフェーンは特徴的であることから、また異なる意味で価値が高いスフェーンとして認知されています!
より輝きが強いスファレライト
また、スフェーンの大きな特徴であるファイアですが、スフェーンの他にファイアが美しい天然石として、「スファレライト」という石が挙げられることがあります。こちらはスフェーンとは違って、赤色から琥珀色の石で、日本では「閃亜鉛鉱」という呼び名があります。
スファレライトも、スフェーンと同様に、ダイヤモンド以上のファイアを持つと言われており、光に当てたときの反射がとても美しい天然石です。日本では、その美しさから「幻惑の石」との異名も持っています。
一方で、スファレライトとスフェーンとの違いとしては、スフェーンのファイアには多色性があるという点です。スファレライトのファイアが単色で細かくきらめくのに対して、スフェーンのファイアは様々な色にはんしゃするのが特徴です。
スファレライトとスフェーン、ファイアの美しさという点では非常に似ている石ですが、それぞれ異なる魅力を持っています。機会があれば、両方を見比べて、お気に入りのものを選んでも楽しいかもしれませんね♪
まとめ
今回は、7月の天然石に新たに追加されたスフェーンを紹介しました。これまであまり広く知られてこなかった天然石ですが、知れば知るほど奥の深い石であることが分かったのではないでしょうか。
希少性が高いスフェーンですが、その色味や透明感、ファイアの輝きは他の宝石にも劣らない美しさがあります。今回のスフェーンの紹介で、もしも興味をお持ちになった方は、スフェーンの宝飾品を探してみるといいかもしれません。
今回、スフェーンを含めて10石が加わった他の誕生石も、ぜひ探してみてくださいね♪